先日「タイポさんぽ」のページをつくる際、看板の写真を探していたところ、あることに気がつきました。「サンハトヤ」や「三笠温泉」など、昭和の看板の文字には、とにかく赤が多く使われているのです。
ほかにも映画のタイトル、チラシやパンフレットの大見出し…とにかくすべてが赤文字(外側に白い枠)でした。
タイポ・施設名の赤
昭和を代表するホテル・ハトヤのタイポも赤。別館のサンハトヤも赤色で統一されています。リズムがあって楽しいフォント。CMでもおなじみです。
こちらは、奈良のホテル三笠温泉のタイポ。やはり赤ですね。とても力強い感じです。このホテル三笠温泉のリニューアル前は、昭和の古き良き温泉ホテルの雰囲気がありました。
スライド式のコップ入れ。今のホテルではクロゼットの引き出しに入っているので、こうした備品はあまり見かけなくなりました。
看板文字の赤
施設名の他にも、赤文字タイポはさまざまなところで使われていました。
こちらは町の中に映画看板が飾られている青梅の看板。青梅は看板絵師の方が住んでいた縁から、昭和の映画看板で街中を飾っていて、レトロな街としても有名です。
ちなみに映画『男の世界』は1970年の作品。映画の看板(復刻版)の文字も赤です(枠線に白)。
昭和のお店では、看板のタイポグラフィにも赤が多用されています。
絵ハガキの赤
昭和はとにかく、絵ハガキが多い時代でした。今のようにデジカメもネットもないので、人々は旅行の思い出に絵ハガキを書い、絵ハガキを送りました。
そのあたりの昭和の観光事情については『昭和30年代 モダン観光旅行』という本に詳しく載っています。そして、この本に掲載された当時の絵ハガキのタイトルもまた、赤い色のタイポなのです。
こちらは私が購入した昔の絵はがきなのですが、こちらのタイトルもまた赤。『昭和30年代 モダン観光旅行』を読むと、ほとんどの絵ハガキやパンフレットの表紙が赤文字なのです。
「花蕾晒」という、さらしの中に入っていた商標。こちらは現代のものですが、レトロっぽいので、デザインは昔から変わっていないのかもしれません。(プラやリサイクルマークは追加していますが…)
昭和の赤、復興の赤
昭和を代表する建築物である東京タワーも「赤」ですね。赤く塗られた鉄骨が、無骨でありながら実直な昭和の男性のようです。
戦争が終わり、産業も娯楽も、とにかく一生懸命だった昭和人。そんな昭和の情熱が、赤いタイポに込められていたのかもしれません。