昭和の時代、どんな街にも必ず映画館があったものです。しかし、映画産業の衰退やシネコンの台頭によって、今では「街の映画館」は希少な存在となってしまいました。
そんな中、ほそぼそと、でもしっかりと街に残るレトロな街の映画館もあるのです。東京近郊にあるレトロ映画館を巡ってみました。
川越スカラ座(埼玉県川越市)
川越スカラ座は、NPO法人プレイグラウンドが運営している「街の映画館」です。映画ファンや地域の人々の助力によって今も営業を続けています。
映画関係者にもスカラ座のファンは多く、コロナ前には監督や役者さんによるトークショーも開催されていました。
ただ映画を観に行くのではなく「スカラ座に映画を観に行く」のが目的になる、そんな映画館です。
レトロな書体のスカラ座看板。
昔懐かしい、赤のベルベット風の椅子。スカラ座では一部の座席にはテーブルが付いています。売店では地元の川越サイダーや狭山茶などが販売されていて、飲み食いをしながら映画が楽しめます。
ただし、周りの方の迷惑にならない範囲でですが。
川越スカラ座の廊下。トイレに続く廊下はノスタルジックな雰囲気。このまま映画の世界に引き込まれてしまいそう。
子供の頃、映画館の廊下は暗くて、なんだか違う世界に行ってしまそうで怖かったものです。
スカラ座の廊下がまさにそんな昭和の映画館の雰囲気でした。
「映画館に行く」というのは、今ではとても貴重で楽しい娯楽です。川越スカラ座は、そんな楽しい時間が過ごせる場所です。ぜひ一度、川越スカラ座で映画と映画館の雰囲気を楽しんでみてください。
名画座・早稲田松竹
早稲田松竹は、今では珍しくなってしまった、二本立てで映画を上映する名画座です。
以前、ウォン・カーウァイ監督の『ブエノスアイレス』が久しぶりに上映されると聞き、早稲田松竹まで見に行きました。
雰囲気のあるレトロな外観ですが、館内は快適。
椅子にはカップホルダーが設置され、すわり心地も良く、とても観やすい映画館でした。
館内には、上映映画の解説やポスター、スチール写真などが掲示されて、映画の余韻を楽しむことができます。
私が育った田舎にも、こうした映画館があって、よく二本立てで映画を観たものです。
入場料で二本の映画が見れるので、お金のない学生が暇をつぶすのにはもってこいの場所でした。当時こうした名画座で、たくさんの映画をみたのはいい思い出です。
吉祥寺オデヲン
片桐はいりさんの映画館エッセイ『もぎりよ今夜もありがとう』を読んでから、どうせ映画を観るのならシネコンじゃなくて、昔ながらの映画館で観たいと思ってました。
吉祥寺オデヲンは、ちょっと昔の映画館の雰囲気が残る映画館です。
ここにはクソまずくてでかいポップコーンも、ゲロ甘のチュロスもなく、バカでかい氷でカサをごまかしたドリンクもありません。
シネコンにありがちな指定席制もありません。ロビーにあるソファで休みながらワクワクしながら上映を待ちます。
場内はさすがにドリンクホルダーつきの新しい椅子に変わっていますが、雰囲気は昔のままです。
昔ながらのポップコーン販売機が昭和の映画館の雰囲気を醸し出しています。(もう一つはサッポロポテト)
※数年前の情報ですので、現在と異なる場合があります。
吉祥寺プラザ
吉祥寺駅のアーケードを抜けて左に曲がって少し行ったところにある吉祥寺プラザ。アニメ『呪術廻戦』の舞台にもなった映画館です。
その外観がちょっと、迫力があるというか…なかなか、入るのに勇気が入ります。映画館は階段を上がって2階、屋上はバッティングセンターになってます。
中に入ると小さなチケットカウンターと休憩スペース。自動販売機だけなのは少し味気ないですが、大味のシネコンフードよりはましです。
廊下にはレトロな照明とビロードのカーテンが雰囲気があっていい。スクリーンはやや小さいものの、劇場は割合広く、椅子もやわらかくて快適。スクリーン前にお立ち台があるのもワクワク♪
音響や映像のよいシネコンもいいのですが、こうして小さい映画館でゆったりと映画を楽しむのもまた、映画の醍醐味だと思います。
まとめ
この記事を書くため、街の映画館について調べてみたら吉祥寺プラザ閉館の情報が…。吉祥寺はバウスシアターなど個性的な映画館があったのに、少なくなってしまい残念です。
最近では配信で映画を見るのが当たり前になってきましたし、そのうち「映画館で映画を見る」という行為そのものがなくなってしまうのかもしれませんね。
せめて、秩父の国際劇場のように、建物だけでも再利用されますように…。