昭和のレトロビルが、じわじわと人気を集めています。NHKでも「すこぶるアガるビル」として特集が組まれたり、レトロビルの本が出版されるなど、一部のマニアに人気を博しているのです。
レトロビルと現代ビルとの違い
こうしたレトロビルと、現代のビルの大きな違いが「装飾」です。三浦展さんの著書『ヤバいビル』では、ヤバいビルのことを「高度経済成長時代に建設された、個性的なデザインのビル」と評しています。

建築家によってデザインされたビルは、昔も今も、洗練されています。しかし、施主の「目立つように」という発注のもと、街の建築屋さんが作ったのは、洗練よりもインパクトが大事。
そのためビルの手すりや窓枠には、過度な装飾がほどこされました。また、ビルの形状も円形や段違いになっていて、シンプルな現代のビルとは違った面白いデザインとなっています。
街で見つけた、昭和のヤバいビル
埼玉県大宮駅近くにある「大宮ガレージ」は、半円形のカーブが施されています。現代だったら立方体でつくるところに、あえて円で作ってあるのは、何か理由があるのでしょうか。
タイポも丸ゴシックで可愛らしい雰囲気。

積み木のような昭和ビル
昭和ビルの特徴の一つに「互い違いデザイン」があります。現代のように直線的ではなく、各ユニットがランダムに配置されています。
そのため、出っ張ったり凹んだりする積み木のようなデザインになっているんです。
もしかしたら、これらのデザインは1972年に黒川紀章が設計した有名な「中銀カプセルタワービル」の影響なのかもしれません。

所沢にある古い積み木ビル。レンガやガラスなど、色もデザインも違うユニットが、互い違いに配置されています。

少しでも空間に余白があれば、なにか装飾を施したくなるのは、昭和レトロビルの特徴かもしれません。
イカす壁面デザイン
昭和のレトロビルは、壁面もイカしています。こちらの建設会社のビルは、壁面がおしゃれ。タイルではなく、黒い小石が一面敷き詰められています。交互に配置された細長い窓もかっこいいですね。

こちらは、大宮のテナントビル。タイルがユニットごとに区切って貼られているのが面白い。よく見ると、脇にポコっと小さな窓のある部分がはみ出しています。階段なのでしょうか?
階の途中に「切れ込み」が入っているのも珍しくて面白いですね。大宮にはこうした個性的なレトロビルが多いのです。

とにかく装飾!な昭和ビル
こちらは70年代のように、カラフルなタイルや個性的なデザインではありません。しかし、普通のテナントとアパートのビルにも見えます。しかし、よく見ると、あちこちに装飾が…。
いったい、何を表しているのでしょう展。テナントの入り口には曲線と直線による不思議な形の装飾が施されています。

そして、壁面にまわるとこれ。この鳥のクチバシのような装飾は一体何を表しているのでしょうか…?アパートの入り口部分では、円と直線が抽象的に配置されています。
一見普通に見えて普通じゃない、そんなヤバいビルは、おそらく80年代、バブルの頃に建てられたのかもしれません。バブル期は、他と違った個性が求められた時代でしたから。

そして、こちらのマンションも、廊下部分の柱に八角形の装飾が施されています。霞ヶ関マンションは、川越市霞ヶ関にあるレトロなビルです。

マンションのタイポグラフィも昭和っぽくてすてきです。

外装のデザインのほか、タイルの外壁や床の装飾が70年代のサイケな雰囲気を醸し出しています。

まとめ
現代建築とはちょっと趣の違う過度な装飾、色鮮やかなタイルが施されたビルがあったら、もしかしたらそれは、昭和に造られたレトロビルかもしれません。
そんな風にして昭和のビルは現代の街の中にまぎれているのです。そして、そんなビルを発見した時は、なんだか掘り出し物を見つけたようで、嬉しくなってしまいます。