デ・ラランデ邸は江戸東京たてもの園に展示されている洋館です。この洋館は、建てられてからさまざまな人の手にわたり、養蜂や小説の舞台になりました。
カルピスと養蜂とカフェの洋館
東京都小金井市にある江戸東京たてもの園では、江戸時代から昭和初期の歴史的建物が移築・展示されています。今回はその中で私のお気に入りの建物、デ・ラランデ邸について。
デ・ラランデという、ラ・ラ・ランドのような建物名の由来は、当時住んでいたドイツ人建築家の名前です。もっとも、作ったのは日本人らしいのですが、そこから増築を加えたのがデ・ラランデでした。
ラランデ邸はその後、中国人貿易商やスペイン公使館を経て、戦後はカルピスの発明者である三島海雲氏が所有していました。三島氏は庭で養蜂を行っていて、蜂たちは贅沢にも、赤坂離宮や東宮御所の花々から蜜を集めていたそうです。
三島海雲氏はお寺の息子に生まれ、モンゴルを旅した際に遊牧民に振る舞われた乳飲料に感銘をうけてカルピスを作りました。また、乳酸飲料を飲んでいたせいか、90代まで長生きされたとか。
電車から見えた、あこがれの洋館
デ・ラランデ邸は当時、信濃町の高台にあり、中央線の車内から外観をみることができました。ビルに囲まれた一角に、スレート葺きの屋根、赤い壁の洋館。
一体どんな由来がある建物なのだろう…?と、よく想像したものです。
その詳細を知ったのは建築史家・藤森照信さんの『建築探偵の冒険〈東京篇〉』という本でした。文中では、藤森先生が実際にラランデ邸を訪れた様子や当時の写真を掲載しています。
藤森先生の本を読んで、いつか訪れてみたい…と思っていましたが、当時ラランデ邸は一般公開を行っていませんでした。
もう、このまま老朽化して解体され、一般人にはみる機会などないのだろうな…と、思っていたら、 ラランデ邸は2013年にたてもの園に移築され、気軽に観られるようになったのには驚きました。
こうして、私は、あこがれの建物の中を見ることができたのです。
デ・ラランデ邸のインテリア
デ・ラランデ邸の室内は、壁紙や暖炉、照明など、インテリアもすばらしいです。壁紙はおそらくウィリアムモリスか、アールヌーヴォー風。格調高いデザインです。
室内では年代物のピアノが展示されています。飾りかな?と思ったのはおそらくろうそく立て。電気のない時代はここにろうそくを立てて演奏していたのでしょうね。
こうしてみると、とても現代の日本にいるとは思えない雰囲気です。建物は日本人が設計したそうですが、ドイツ風のデザインの特徴があります。奥の壁の飾りや暖炉は当時のまま。
デ・ラランデ邸内のカフェ
現在、邸内ではのカフェ・武蔵野茶房で、コーヒーやスイーツを楽しめます。そして、カルピスと関わりのある建物のせいか、メニューには特性の「ミルクカルピス」もありました。
デ・ラランデ邸の元の持ち主だった三島家では、戦後の一時期、生活のため喫茶店を経営していたそうです。
そうした経緯を知ると、邸内にカフェがあるのも、この建物にふさわしいのかもしれません。